Quantcast
Channel: 就職ジャーナル »仕事とは?
Viewing all articles
Browse latest Browse all 165

武井 壮

$
0
0

たけいそう・1973年東京都生まれ。神戸学院大学法学部卒業後、中央学院大学商学部卒業。神戸学院大学在学中に陸上を始め、競技歴2年半で97年日本陸上選手権大会十種競技で優勝。100メートル走ベスト記録(10秒54)は2014年4月現在十種競技100メートルの日本最高記録。米国・アリゾナ州へのゴルフ留学や、台湾プロ野球リーグなどでのアスリートのトレーナー、茨城ゴールデンゴールズのピッチャーなどを経て、芸能界での活動を開始。2012年深夜番組『うもれびと』に「百獣の王を目指す男」として出演し、注目を集める。

努力や工夫で変わるのが人生の楽しみ。「才能」の話をすることに意味はない

大学時代に陸上を始めて十種競技の日本チャンピオンになり、卒業後はゴルフ特待生として米国・アリゾナ州に留学。オレゴンの森の中でジョギング中、巨大な鹿に遭遇して「殺される!」と思ったことがありました。そのときに人間以外の生き物の脅威を初めてリアルに感じ、自分の無力さを知ったんですね。それで、何者にも襲われない存在になるために動物図鑑を買って倒し方を研究し始めたんです。

 

ライオン、ゾウ、ゴリラなどあらゆる動物と頭の中でシミュレーションをして闘い、30代前半には1万戦無敗。そのころから「百獣の王」を名乗り始めました。最初は皆さんから「何を言っているんだ」と言われましたが、少しずつ「百獣の王・武井壮」として関心を持たれるようになって。西麻布のバーでたまたま知り合った電気グルーブ・ピエール瀧さんの番組に呼んでいただいたのをきっかけに、芸能界で仕事をするようになりました。

 

20代後半で米国から帰国後、芸能界に入るまでにはプロアスリートのトレーナーや茨城ゴールデンゴールズのピッチャーなど、そのときどきで楽しそうだなと思ったことをやってきました。スポーツは子どものころから好きだし、得意でしたが、陸上選手になりたいから陸上をやっていたわけではないし、ゴルフ選手になりたいからゴルフ留学したわけじゃない。楽しいからいろんなスポーツをやっていて、それが結果的に仕事に結び付きました。

 

芸能界での活動にしても、これまでと違うことをしているという意識はありません。「武井壮」はどこにいても「武井壮」。何をするにしても、僕が気をつけているのはただひとつ。「自分自身をできる限り思い通りに動かす」ということです。自分の頭の中に浮かんできた感覚や技術といったいろいろなものがありますが、そういったものを「武井壮」としてきちんと伝えられるようにしようと思っています。

 

自分自身を思い通りに動かすことの大切さを知ったのは、小学校5年生のときです。野球で全打席ホームランを打ちたいのに打てず、周囲に理由を聞きましたが、誰も答えられなくて。悩んでいたある日、父が撮影してくれたビデオで自分の打撃フォームを見てハッとしました。僕が頭で描いたフォームとはまったく違う動きをしていたからです。それがヒントになり、物事を思い通りにやるための近道は、スポーツの技術を身につける以前に、自分自身を操る技術を磨くことだと気づいたんです。

 

それからは毎日の生活の中で、指先まで思った通りに動かせるよう訓練を積み重ねました。今でもそうです。例えば、ペットボトルで水を飲むときも、どの指を使って、どの位置を持つのかを頭でイメージして体を動かしています。僕がいろいろなスポーツを短期間で習得し、結果が出せたのは特別な才能があったからではなく、こうした積み重ねがあったからだと思っています。

 

スポーツでも仕事でもそうですけど、何かを始めてうまくいかないと「才能がないから、ダメなんだ」とあきらめてしまう人が多い。僕はそれがすごく残念です。才能ですべてが決まるなら、何をやっても面白くないじゃないですか。生まれつき順位が決まっているんですから。努力をしたり、工夫をしたりして、その順位をひっくり返せるのがスポーツだったり、ゲームだったり、仕事だったり、人生の楽しみ。才能の話なんてする意味がないと僕は思います。

ph_shigoto_vol119_01

 

世の中における自分の価値を高めるにはどうすればいいか

40歳になり、「百獣の王」として世界のアスリートと戦いたいと思い、昨年(2013年)は「第20回世界マスターズ陸上競技選手権大会」に出場しました。200メートル走(40〜44歳)で銅メダルを獲得しましたが、若いときよりも足は遅くなっています。十種競技で日本チャンピオンになった24歳の僕の方が今よりもずっと力があったし、記録も出していました。でも、当時は誰も僕のことを見ていなかった。僕の走りを見て喜んでくれる人たちの数は、足が遅くなった今の方がはるかにたくさんいます。

 

そういう現状を見るにつけ、スポーツの価値とか人間の価値というのは、記録を出すとかメダルの色とかそういうことではなくて、どれだけたくさんの人が喜んでくれるか、応援してくれるのかということだと思うようになりました。僕の姿を見て「ああ、武井壮ってすごく頑張っているな。あいつがやっているんだから、俺も頑張ろう」と思ってくれる人がいたらうれしいし、そういう活動をすることが自分の仕事のような気が最近していて。「記録を出したい」「チャンピオンになりたい」と自分の欲ばかりで生きていたころにはなかった充実感があって、「これまでの人生で今日が最高」という日を毎日更新している感じです。

 

振り返ってみると、僕が皆さんと同じ年ごろのときは、世の中に認められるような要素は何もありませんでした。ひとつスポーツで日本一になるという目標だけがあって運良くかなえることができ、ヒーローになれると思ったけれど、翌日からは何も変わらない毎日が待っていました。僕が手に入れたタイトルとか記録というものは自分にとって価値があっても、皆さんにとって価値のあるものではないと気づいて。がく然としましたが、そこからは世の中における自分の価値を高めるにはどうすればいいかを追い求めてきました。

 

仕事というのは、自分ひとりでは成立しません。仕事には必ず相手がいて、自分の持っている価値を誰かに与えたり、手渡したり、贈ったりするのが仕事をするということだと僕は思っています。就職活動をするにしても、面接で採用されたいからと自分を取りつくろって思ってもいないことを口にするのではなく、自分がその会社に入社したとしたら、会社の事業を通して何を世の中に届けたいのかをよく考えていただけたらなと思います。そうすれば、おのずと自分が何をすべきかも見えてくるはずです。

 

僕の場合、20代ではとても人様に対して仕事をするなんてことは考えられなくて。40代になってようやく、仕事らしきものができ始めているんじゃないかなと感じていますが、まだまだです。皆さんは僕の年になるまで時間がたっぷりありますから、ゆっくりと自分を育てあげて、誰かに価値を届けてあげられる人になってほしい、そんなふうに思います。

 

ph_shigoto_vol119_02

 

INFORMATION

武井さんのオフィシャルサイト『目指せ!百獣の王!!』(http://gogotakei.com)。メディアへの出演情報などが掲載されている。ツイッター(@sosotakei)での発言も注目されており、フォロワーは約48万人にのぼる。

ph_shigoto_vol119_03

 

取材・文/泉彩子 撮影/刑部友康


Viewing all articles
Browse latest Browse all 165

Trending Articles